樹脂カバー付きクイックファスナー開発秘話
お客様からの
依頼じゃないんです
光洋の会議室で、営業担当の櫻井に話を聞きました。
「実はこれ、お客様からの依頼ではなく、自社で『こんな製品があったらいいな』と思って開発したのがスタートなんです」
そう言って見せてくれたのが、樹脂カバー付きクイックファスナーです。
透明感のある白い樹脂カバーの中に、金属製のファスナーが収まっています。
クイックファスナーは、配管の接続部分を固定する板ばね製の部品です。
ばねの力でフランジを挟み込み、ネジを使わずにワンタッチで着脱できます。

業界の「当たり前」に
疑問を持った
「補助金を活用して開発を進めました。2016年か17年頃のことです」
なぜ、自社で開発しようと思ったのでしょうか。
「当時、トイレの温水洗浄便座や洗面台では、ファスナーとカバーを組み合わせて使うのが一般的でした」
消費者の手に触れやすい場所では、樹脂カバーを付けるのが慣例だったそうです。
「でも、その樹脂カバーって、決まった製品がなかったんです」
つまり、メーカー各社が独自に設計・製造していました。
「ファスナーは弊社から購入し、樹脂カバーは樹脂成形メーカーに依頼、それを組み立て業者に持ち込んで組み立ててもらう流れでした」
購買担当者は、複数の業者に発注する手間がかかります。 在庫管理も煩雑です。
さらに、独自設計のため製品が大きくなるという問題もありました。
「それを一体型にできれば、発注も楽になるし、コンパクトにもできる。そう考えたのがきっかけです」

業界の「当たり前」に疑問を持ち、解決策を考える。それが、この製品開発のスタートでした。
開発当初は、赤・青・緑の3色展開でスタートしました。 信号機のような鮮やかな色です。
「注意喚起のためです。『ここにファスナーがありますよ』というのを分かりやすくするために、あえて目立つ色にしました」
なるほど。安全面への配慮だったんですね。
サイズは8パイ(直径8mm)、10パイ、12.7パイの3種類を想定していました。
市場調査の結果、8パイが最も需要が多かったそうです。
顧客の声を聞きながら
ブラッシュアップ
製品を紹介すると、すぐに問い合わせがありました。
「最初のバージョンは、ちょっと外しにくかったんです」
顧客の要望を確認しながら改良を重ねていきます。
「大きな変更は2つです。一つは、取り外しをしやすくすること。もう一つは、色です」
「お客様から『できるだけスッキリ見せたい』という要望がありました。それで、色付きから透明白に変更したんです」
目立つ色から、目立たない色へ。
これは意外な変化でした。
「最初は『ここにファスナーがあります』と目立たせることが安全だと考えていました。でも実際には、インテリアに馴染む方が好まれたんです」
顧客の声に耳を傾け、柔軟に対応する。 そこに光洋の姿勢が表れていました。

樹脂カバーの3つのメリット
改めて、樹脂カバーのメリットを聞きました。
「大きく3つあります」
1. 安全性
「金属がむき出しにならないので、手を切る危険がなくなります。これが一番大きなメリットです」
2. 取付ミス防止
「樹脂カバーにはロック機能が付いています。『カチッ』と音がするまで作業すれば、確実に接続できているかが分かるんです」
なるほど。ネジ式だと「ちゃんと締まったかな?」と不安になります。 しかし、クイックファスナーなら音と手応えで確認できるわけです。

「施工ミスによる水漏れトラブルも防げますし、作業者にとっても『ちゃんと付いた』という安心感があります」
確かに、現場での信頼感につながりそうです。
3. 一体型の利便性
「ファスナーとカバーが一体になっているので、お客様は一度の発注で済みます。在庫管理も楽になりますし、組み立ての手間も省けます」
購買担当者、設計エンジニア、生産管理者。
それぞれにとってメリットのある製品だということが分かりました。
多くの企業に採用されました

自社発信で開発した製品は、徐々に広がっていきました。
主にトイレの温水洗浄便座、洗面台、給湯器など水回り関係のメーカーです。
「10年近く経った今でも、継続して使っていただいているお客様もいます」
一体型の利便性、安全性、取付ミス防止。 これらのメリットが、現場で実際に評価されている証拠です。
試作からでもお気軽に
ご相談ください
最後に、これから相談を考えている方へのメッセージを聞きました。
「完全に仕様が固まっていなくても大丈夫です。『こんなことで困っている』という段階から、一緒に考えていきますので」
樹脂カバー付きクイックファスナーの開発も、そうした姿勢から生まれました。
試作段階でしっかり評価することで、量産後のトラブルを防げます。 実際、納品後のクレームはほとんどないそうです。
「小ロットでも対応できますし、お客様の予算に制約があれば、折り合いをつけることもできます。受注生産なので、お客様ごとに相談させていただいています」
自社発信で始まった製品開発。 それが、業界の常識を変え、多くのメーカーに採用されるようになりました。
その背景には、顧客の声に真摯に耳を傾ける光洋の姿勢があります。