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バネブログ

ばねに適した材料~線ばねの場合~

皆さんは、ばねの材料というと何が思い浮かびますか?
 “金属”と答えた方が多いのではないでしょうか。
ひとくちに金属といっても、様々な種類があり、それぞれに磁性や電気伝導性等といった特性が異なります。

当社ではお客様が必要とするばねの加工・使用時に、どのような性質が求められるか細かく検討、検証し材料を決定しています。

前回、板ばねの材料についてご紹介しました。
今回は、当社で作っている線ばねによく使用する材料について、どんな特徴で、どのような製品を作るのに向いているのかご紹介します。

板ばね編はこちらhttps://koyo-co.co.jp/blog/flat-spring_materials/

【目次】

➀ばね用ステンレス鋼線
②硬鋼線
③ピアノ線
➃リン青銅

当社の製品は、主に手のひらサイズの小さなばねになります。そのため、これらに共通するのは冷間加工に使う線材であるということです。冷間加工とは、素材を常温で加工する方法で、精密ばねや小型ばねといった質量がg(グラム)単位の小型のばねの製造に向いている加工法です。ちなみに、大きなサイズや複雑な形状のばねの製造には熱間加工という、素材を高温に加熱してから加工する方法がとられます。

材料を紹介するにあたって、下記のように5つの観点から金属の特徴を表した表が登場します。

耐食性★☆☆☆☆(錆びやすい)~★★★★★(錆びにくい)
磁性★☆☆☆☆(発生しない)~★★★★★(発生する)
熱伝導性★☆☆☆☆(低い)~★★★★★(高い)
展延性★☆☆☆☆(破断しやすい)~★★★★★(破断しにくい)
電気伝導性★☆☆☆☆(通りにくい)~★★★★★(通りやすい)
★が少ない=価値が低い材料というわけではなく、単に特徴の大小を視覚化しています。

今回は専門用語が多い内容となっていますので、ピンと来ないという方は、表の星の数と写真だけでもご覧になってください。

➀ばね用ステンレス鋼線

JIS規格:SUS304 / SUS316

耐食性★★★★★錆びにくい
磁性★☆☆☆☆発生しにくい
熱伝導性★★☆☆☆低い
展延性★★★★★破断しにくい
電気伝導性★☆☆☆☆通りにくい

ばね用ステンレス鋼全体の特徴として、耐食性に優れておりメッキ処理や防錆処理を行うことなく、さまざまな使用環境で利用が可能です。成分により差はありますが、加工によって磁性を持たせることもできます。また、鉄よりも熱伝導性は劣りますが、高温になるほど熱伝導率が大きくなります。

使用例

・給湯器内部で水の量を調整する弁
・ガスコンロのバーナー部の安全装置
・家庭用かき氷器

錆びに強い特長を活かし、水回りでの使用が大半を占めています。

②硬鋼線

JIS規格:SW-A / SW-B / SW-C

耐食性★☆☆☆☆錆びる
磁性★★★★★発生する
熱伝導性★★★★★高い
展延性★★★☆☆破断の可能性あり
電気伝導性★★★☆☆通る

硬鋼線は、炭素含有量の違いによって「SW-A」「SW-B」「SW-C」とJIS規格で3種類に分類されており、製造目的や求められる仕様・強度に応じてどれを採用するか検討されます。
例えば、SW-Aは引張強さが低いため、ばね用としては需要が少ないですが、引張強さが高いSW-Bは、主に静荷重を受けるためのばねとして使用されています。ちなみに当社では、B種よりもさらに引張強さが高いSW-Cを使用しています。

使用例

・電池の接点ばね

通電性をよくするためにニッケルメッキを施した材料を使用しています。
ステンレス材に比べ耐久性が良く、電池交換も含めて繰り返し使用する事も考慮し、硬鋼線を使用しています。

③ピアノ線

JIS規格:SWP-A / SWP-B / SWP-V

耐食性★☆☆☆☆錆びる
磁性★★★★★発生する
熱伝導性★★★★★高い
電気伝導性★★★☆☆通りやすい

ピアノ線は、強度と弾性率が高い材料です。JIS規格で「SWP-A」「SWP-B」「SWP-V」の3種類に分類されており、A種は、ピアノ線として最も一般的なタイプで、強度が高く耐摩耗性に優れています。B種はSWP-Aに比べてさらに高い強度を持っていますが、やや硬く、引っ張り強度が強化されているため成形加工には注意が必要となります。V種は上記2種より高い弾性率と耐摩耗性を持っており、非常に強度が高いことから主に船舶や自動車などのエンジン部品の弁ばねといった過酷な条件下での使用に適しています。SWP-AやSWP-Bはブレーキやクラッチの部品として使用されます。ちなみに当社ではSWP-Aを多く使用しています。

使用例

・引き戸を開閉し、自動でゆっくり閉める機構部品

繰り返し何度も開閉が行われる引き戸に使用されています。
硬鋼線よりさらに耐久性が高い材料となりますので、繰り返し使用する箇所や強度を求められる箇所に使用される事が多いです。

【ピアノ線と硬鋼線の違い】
ピアノ線は高級材料で硬鋼線は一般材料とされ、ピアノ線は精密機械、硬鋼線は身の回りのばねに使用されることが多いです。
同じ高炭素鋼線で化学成分も似ている2つの線材ですが、なぜピアノ線だけが高級なのかというと、硬鋼線よりも製造過程に手間がかかっているからです。
どちらも、パティンチングという熱処理をした後、酸洗、表面処理を行い、常温で伸線加工を施します。それに加えピアノ線は、不純物の少ない材料選び、入念なキズ取り、脱炭の防止など徹底した管理をされています。


➃リン青銅

耐食性★★★★☆錆びにくい
磁性★☆☆☆☆発生しない(非磁性)
熱伝導性★★★★★高い
展延性★★★★☆破断しにくい
電気伝導性★★★★★よく通る

リン青銅は銅を主成分とするスズとの合金である青銅に分類される銅合金の一種です。鉄鋼ほどの耐疲労性を持ち、銅に近いばね性を持ちます。また、化学的な腐食に強く、耐摩耗性にも優れていることから、電気機器用ばね・自動車・情報通信機器などに用いられます。

使用例

・家庭の電力使用量を計るメーター

電気伝導性が優れているため、微電流の端子として使用されています。
耐食性も高くなっており端子等にも使用されています。

長く使える製品を目指して

ここまで、当社でよく使われている線ばねの材料を4つ紹介してきました。

今回ご紹介したもの以外にも、ニッケルメッキ線や軟質1号・2号を使った「金属ばね」、そして金属以外が使われている空気ばねやセラミックばねといった非金属ばねなど、多くの種類が存在しています。それらは、また別の機会にご紹介できればと思います。

私たち光洋は、お客様に安心して長く使っていただけるばねを作るため、形状はもちろん、それに適した材料を選定することを大切にしています。
これからも光洋は、使用環境に適した材料で「ばね」を作ることで、皆さまの安心をつないでいきます。

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