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バネブログ

CROWN開発秘話

光洋をはじめ、部品製造業では仕入先からの定期的なコストダウン要請は通例となっています。もともと光洋は、合理化提案した部品を供給する事で、お客さまの商品の販売台数が増え、そこに使われている我々の部品の生産も増え、売上も上がるという考えのもと、“お客さまのために何ができるか”という提案型営業スタイルを30年以上前から組織力をもって実践してきました。

はじまりはコストダウン対策

その提案型営業スタイルの中で生まれたのが「クイックファスナー(異径・同径)」でした。クイックファスナーは、それまで使用されていた部品に対するQCD(Q=品質・C=コスト・D=納期)の優位性を担保しつつ、単価を抑えるVE提案(バリューエンジニアリング)であったため、受注数が増える中、お客さまからのコストダウン要請に苦慮していました。

CROWN(クラウン)
CROWN(クラウン)

生産現場の改善を始め、夜間自動生産・原材料調達の工夫・生産ロスや材料ロスの低減・タクトタイム短縮・梱包仕様の見直し…と毎年あらゆる手段でコストダウンを図っていましたがいよいよ万策尽きかけたその時、ひらめいたのが根本的にファスナーの形状・仕様を変える事でした。

クイックファスナーの大前提

一口に形状・仕様を変えると言っても、使用が容易なデザインであること、コストを抑えたものであることは当然として、給湯器に必要とされる品質特性“ウォーターハンマー現象に耐えうる給湯器メーカー最高基準”の達成は大前提です。

既に幾通りもの異径・同径クイックファスナーの設計・開発を経験していたため、応力の集中を回避した形状が重要であることや、集中応力を分散させる方法についてのノウハウ・知見は充分に蓄積されていました。
しかし、それでも「根本的に新しい形状」のファスナーを生み出すまでには至っていませんでした。

明石海峡大橋がヒントに

集中応力の掛かる部分を分散化させることができれば画期的な形状のクイックファスナーが設計できる。それはわかっているのですが、どうすればよいか頭を悩ませていた中、ヒントとなったのは、設計者との会話でした。

「世の中で応力を分散させた構造のものって何かある?」

私の何気ない問い掛けに返ってきたのが、明石海峡大橋にリンク式伸縮装置の話でした。
全長3,911m、世界最長の吊橋である明石海峡大橋。実は、建設当初は全長3,910mでした。ところが建設している最中の1995年、阪神・淡路大震災にみまわれ、地盤のずれで全長が1m伸びることになりました。多少の被害は出たものの、橋の建設自体に大きな問題はなく3年後の1998年に無事開通することができた秘密が「伸縮装置」でした。
元々、長大な橋は温度変化や荷重、風、地震等によって長さが変わってしまうため、その変位を吸収する大きな道路伸縮装置が使われています。そして明石海峡大橋には「リンク式伸縮装置」と呼ばれるものが使われていたことを知ったのです。

これが「CROWN」開発のヒントとなりました。

そうだ!考え方は「柳に風」

「リンク式伸縮装置」を見て、相手に逆らわず、さらりとかわしてあしらう「柳に風」の発想も思い至ったのです。
そこから、まず応力を分散させる理想的な形状の設計に入りました。
使用配管円周に可能な限り接することができる形状かつ、スリット部と突起部を限りなく増やし、両端をロックしてしまう。
このアイディアをもとに、当時の営業の新人2名にフリーハンドでイメージ図を描いてもらいました。これを契機に、具体的な寸法の設計が加速。既に自社製の耐水圧性能試験機を作り上げていたため、試作→評価を繰り返しで性能を見極め完成に至りました。
また、東大阪市の製品化促進事業補助金を活用させてもらえたことが、完成への強い追い風になったことも書き添えておきます。

クイックファスナーの王様に

その後、この新製品は給水・給湯用分岐配管部(通称:ヘッダー)に使用されることになりました。使用サイズが想定以上の大きさで、耐水圧性能のクリアのための新たな加工方法への取り組みなど、光洋の更なる技術力向上にもつながる製品となりました。

実は、この時点で「CROWN」という名前はまだついていませんでした。
きっかけは最初のお客さまと試作評価をしている打合せの時に、
「これって王冠みたいだね!」と言う一言でした。

そうだ画期的な製品であるので、名前を付けて世間に広く知ってもらおう。
王冠=CROWN(クラウン)が良い!
そして、王様の王冠=CROWN(クラウン)があるなら、お妃様の頭飾りも必要だという考えから「TIARA(ティアラ)」も生まれたのです。